特別講演

4 Saito座長
公立大学法人 青森県立保健大学 健康科学部 栄養学科 准教授
齋藤 長徳

 


特別講演「栄養関連の平成28年度診療報酬改定
4 Shiozawa

について」
厚生労働省保険局医療課 課長補佐
塩澤 信良

 


はじめに

診療報酬は中央社会保険医療協議会(厚生労働大臣の諮問機関)での審議を踏まえ、2年ごとに改定が行われる。近年の栄養関連の改正は、栄養サポートチーム加算(平成22年度改定で新設)等、チーム医療での評価が中心であったが、平成28年度改定では、管理栄養士の独自の業務である栄養食事指導について、指導対象と指導内容の拡充が図られた。栄養食事指導料については、平成6年度改定で入院栄養食事指導料が新設され、平成10年度改定で外来・入院栄養食事指導料が増点(100点から130点に増点)されて以来の大幅な改正であり、多くの関心を集めている。

本講演では、「栄養食事指導の対象及び指導内容の拡充」の背景や内容に加えて、医療領域の管理栄養士に今後期待される点などについて概説する。

1 「栄養食事指導の対象及び指導内容の拡充」の背景と内容

( 1 )改正の背景

平成28年度診療報酬改定に当たっては、4つの基本的視点が示され、中でも「地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点」が最重要とされた。地域包括ケアシステムとは、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制のことであり、我が国としては、団塊の世代が75歳以上となる平成37年(2025年)を目途に、この体制が構築されるよう、各種取組を行っているところである。

地域包括ケアシステムの構築に向けては、医療・介護機関と自宅等を切れ目なくつなぐ、適切な栄養管理を可能とする支援が重要となる。平成28年度改定で「栄養食事指導の対象及び指導内容の拡充」が図られた背景には、こうした事情がある。

( 2 )改正の内容

①個別栄養食事指導(外来・入院・在宅患者訪問)の対象の追加

従前の栄養食事指導料の対象範囲は、腎臓食、肝臓食、糖尿食等といった、厚生労働大臣が定める特別食を必要とする患者への指導のみであった。管理栄養士が行う栄養食事指導の有効性や必要性に鑑み、がん、摂食・嚥下機能低下、低栄養等の患者に対する治療食の指導も、新たに保険適用されるようになった。

②外来・入院栄養食事指導料に係る指導時間の要件及び点数の見直し

栄養食事指導には長時間を要することが多く、より充実した指導を適切に評価する観点から、所要の見直しを行った。具体的には、従前は「概ね15分以上」の指導で130点とされていたものが、初回指導は「概ね30分以上」で260点に、また、2回目以降(入院栄養食事指導料は「2回目」まで)は「概ね20分以上」で200点に、それぞれ増点された。

③在宅患者訪問栄養食事指導料の指導要件の緩和

在宅患者訪問栄養食事指導料については、従前は「調理実技」を伴う指導でなければならなかったが、在宅で患者の実状に応じた有効な指導が可能となるよう、「調理実技」が要件から外された。

2  医療領域の管理栄養士への期待

栄養管理のアプローチは種々あるが、単に栄養素レベルに留まらず、患者の様々な生活条件や嗜好等も踏まえ、食品、料理、食事レベルまで、一人ひとりの患者に寄り添い、実行可能性の高い食事を提案できる専門職は、医療領域の管理栄養士のみである。

管理栄養士の栄養管理業務は、判断材料の多さと専門性の高さから、他職種とは独立したものとして処理されることも多いかもしれない。しかし、地域包括ケアシステムでは多職種連携や地域連携がよりいっそう重要になってくることを踏まえると、医療領域の管理栄養士に求められるのは、自らの判断プロセスや成果を、他(多)職種や他施設にも分かりやすい形で、積極的に“見える化”していくことではないかと思われる。

 

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