講演4

15nakamura座長 
神奈川県立保健福祉大学
学長
中村 丁次 先生



miyachi4.「健康づくりにおける運動の役割 ─科学的エビデンスから実践へ─」

独立行政法人国立健康・栄養研究所健康増進研究部
部長
宮地 元彦 先生

 我が国における歩数は過去10年間で1,000歩程度減少し、国民の健康を考える上で大きな懸念の一つである。平成25年4月から始まった厚生労働省の健康づくり運動である健康日本21(第二次)では、平成35年までの身体活動・運動分野の目標として「歩数の増加」「運動習慣者の割合の増加」といった個人の目標を定めた。また、身体活動の重要性について認識しているが実行できないという人のために、「運動しやすいまちづくり・環境整備に取り組む自治体の増加」のような地域・自治体の目標を定めた。これらの目標を達成するためのツールとして、平成25年3月18日、厚生労働省健康局より、「健康づくりのための身体活動基準2013」ならびに「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」(以下、基準・指針)が発表された。

 

 平成18年に策定された「健康づくりのための運動基準2006」と新しい基準を比較して変更された点は、①日常生活で労働や家事などを通じてからだを動かすことを含めた身体活動の重要性を示すために、名称を「運動基準」から「身体活動基準」としたこと、②新たに205本の身体活動・運動疫学に関する原著論文をレビューすることによりエビデンス(科学的根拠)を一層強固にしたこと、③心筋梗塞や脳卒中やがんなどの生活習慣病等だけでなく運動器症候群や認知症の予防効果が確認されたこと、④超高齢社会に対応するために新たに65歳以上の高齢者を対象に、横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので1 日合計40分の基準を示したこと、⑤身体活動量とリスクとの間の量反応関係に基づき、今より10分多くからだを動かすことを提案したことなどである。

 

 新しい身体活動基準で定められた基準を達成するための実践の手立てとして、新しい指針「アクティブガイド」が国民向けのガイドラインとして示された。アクティブガイドは、「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」をメインメッセージとし、A4表裏1 枚にシンプルにかつイラストや図表などを活用し理解しやすいことを目標にまとめた。また、一人ひとりの身体活動状況や運動習慣に応じて、①気づく、②始める、③達成する、④つながる、という取り組みの段階を示し、専門的知識を持たなくても内容を容易に理解できる工夫と、身体活動や運動を増やすための気付きと行動変容ための工夫がされている。学術的な資料でなく、国民向けのメッセージ、情報提供のためのツールと しての要素を強調した。

 

 今後、新しい基準・指針が多くの国民に認知され、身体活動・運動に関する気付きや行動の変容をもたらすことを期待し、普及・啓発のための活動を粘り強く続けていく必要がある。また、学術的観点からは、5年後に計画されている基準と指針の改定に向けて、身体活動・運動および体力に関する質の高い研究の実施を一層推進することが期待される。

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