講演3

15arai_size座長 
東京農業大学総合研究所
客員教授
荒井 綜一 先生

15kunugi_size3.「メンタルヘルスと栄養」

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
神経研究所疾病研究第三部 部長
功刀 浩 先生

 現代はストレス社会といわれ、人々は多くのストレスに曝されている。それによってうつ病に罹患する人が増えている。厚生労働省は、2011年7月より精神疾患を五大疾病の一つに位置付け、重点的な対策が必要であることを明確にした。
 本講演では、メンタルヘルス、特にうつ病と栄養との関連に焦点を当て、Ⅰ.諸外国の研究結果の概要、Ⅱ.筆者らの調査結果、Ⅲ.精神疾患患者への栄養指導について述べる。

Ⅰ.諸外国での研究の概要

 うつ病は、肥満、メタボリック症候群、糖尿病など、一般にエネルギーの過剰摂取が主因となって引き起こされる病態と双方向性の関連があることが指摘されている。食事スタイルとの関連では、地中海式食事に準じた食生活を送っている者は、他の生活習慣病と同様に、うつ病のリスクが低いことが示唆されている。ただし、地中海式食事が良いからといって、そのまま日本人の栄養指導に適応できるとは限らないので、今後、日本での検討を要する。
 n-3系不飽和脂肪酸の不足とうつ病との関連に関するエビデンスも少なくない。米国精神医学会では、魚を食べることや、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの補充を推奨している。ただし、日本でのエビデンスは殆どない。ビタミンでは、B6、B12、葉酸、ビタミンDなどとうつ病との関連が指摘されている。特に、葉酸欠乏との関連を指摘する研究結果が多い。葉酸の補充療法はうつ病治療に効果的であるという報告もある。ビタミンDについても、うつ病患者は健常者と比較して、濃度が低いというメタアナリシスが報告されている。セロトニンの原料となるトリプトファンが涸渇すると、うつ病患者やうつ病の素因をもつ者は気分の落ち込みを引き起こす可能性が古くから指摘さ れている。うつ病患者では、健常者と比較して血中トリプトファン濃度が低下しているという報告も多い。しかし、トリプトファンを抗うつ薬の増強療法として用いた臨床試験では、否定的な結果が多い。ミネラルでは、鉄や亜鉛とうつ病との関連が示唆されている。例えば、妊娠・出産による貯蔵鉄の低下が産後うつ病の発症と関連するという報告が複数なされている。

Ⅱ.われわれの調査

 われわれも、精神疾患者を対象にした栄養調査を行っている。うつ病患者と健常者との比較では、うつ病患者において、肥満傾向、脂質異常症などとの関連が示唆された。血中ビタミン濃度では、葉酸値が低い傾向がみられた。アミ ノ酸の中では血中トリプトファン等の低下傾向がみられた。脂肪酸では、うつ病患者においてn-3系不飽和脂肪酸が低下しているエビデンスは得られなかった。うつ病患者は、健常者と比較して、緑茶やコーヒーの摂取頻度が少なかった。以上から、わが国のうつ病患者においても、栄養学的異常があるが、海外で得られている所見と必ずしも一致していなかった。

Ⅲ.精神疾患患者への栄養指導

 身体疾患や生活習慣病に罹患するとうつ病などの精神疾患のリスクが高まり、うつ病や統合失調症は生活習慣病のリスクが高いことから、精神疾患患者に対して栄養指導をする機会は多いと思われる。しかし、食事の指導をすることが、患者にとってストレスになり、病状を悪化させないか?などの疑問をもつ場合も多いようである。ここでは、精神疾患患者への栄養指導について、情報収集から指導法に関する留意点などについて、簡単に触れたい。
 

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