シンポジウム3

14inoue座長 
元関東学院大学人間環境学部健康栄養学科教授

井上 浩一先生


14tsugane3.「食物・栄養とがん」

独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター
予防研究部長
津金 昌一郎先生

 食べものとがんとの関係については、様々なレベルの研究データがあり、一般のメディアによる情報が錯綜しているため、正しい情報の選別が困難な状況にある。食習慣とは、そもそも、各個人の経験と嗜好に基づいて築かれる人生の楽しみの一つである。それに対して、保健医療専門職などが介入(指導)する以上は、それなりの論拠が必要である。すなわち、「そのような食事をすると、がんになる確率が低くなる」という科学的な因果関係が成立している必要がある。さらには、がん以外の病気への影響を含め、総合的な健康の維持・増進が配慮されたものでなければならない。

 食習慣改善によるがん予防の可能性は高い。がん罹患率の地域差、年次推移、移住による変化などの記述的特徴や、症例対照研究やコホート研究などの分析疫学研究からのエビデンスからは、食習慣とがんとが密接な関係にあることが示されている。さらに、動物実験やメカニズムなどを含めて、その科学的根拠 を総合的にとらえ、複数の専門家が因果関係の有無を評価する作業も行われている。現状の国際評価では、がんのリスクを上げる要因として、飲酒、肥満・やせ、塩蔵食品・塩分、加工肉・赤肉が、一方、予防要因として、運動、野菜・果物が、確実あるいは可能性大と評価されている。これらの食習慣のコントロールは、がん予防に有効といえよう。但し、喫煙などと比べ複雑であり、その実践には予備的な知識が欠かせない。例えば、摂取量とリスクの用量反応関係は、単純に直線的とは限らない。欠乏や過剰によるさまざまなリスクを熟知した、1人1人の摂取レベルやライフステージなどに応じた適切な食習慣改善アドバイスが求められる、そして、日本人のがん予防は欧米のガイダンスの「輸入」ではなく、日本人のエビデンスに基づいて策定される必要がある。

 以上を踏まえながら、「食物・栄養とがん」との関係について、現状において分かっていること、分かりつつあることについて解説する。

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