特別講演

13inoue座長 
関東学院大学人間環境学部健康栄養学科
教授
井上 浩一先生


13adachi「災害時における管理栄養士の役割」

せんぽ東京高輪病院
栄養管理室長・管理栄養士
足立 香代子先生

はじめに

きっと、今回の東日本大震災の恐ろしさから冷静さを取り戻したころ、誰もが「何ができるだろうか。何かしたい」と深く思っていた違いない。私自身は3月末日医師と共に被災現地に入ったのを期に2週間ごとに3箇所に出掛け、管理栄養士の役割を感じながら活動してきた。災害時における管理栄養士の役割は多い。

食事支援と栄養支援

管理栄養士としてできることは、食事と栄養支援がある。食事支援は、生きるために食べることへの援助であり、献立作成や衛生管理、そして適正に食材を振り分ける作業ができる。栄養支援は、避難所、在宅などでの栄養アセスメントに基づいたケアプランである。対象となるのは、起こりうる栄養障害を未然に防ぐことから、口内炎や立ちくらみ、便秘、食欲不振、電解質・水分バランスなどのアセスメントなど栄養障害が生じた人への支援、さらにはすでに生活習慣病、褥瘡、嚥下障害のある人がいる。これらの人に、多くの支援食品である栄養補助食品やサプリメントのうちから適正なものを選択し、適正量を渡すことができ、説明できるのも重要な支援である。

医療チームの一員としての連携

災害派遣医療チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)は、超急性期災害医療活動(48時間以内)、日本医師会災害医療チームJMAT(JapanMedical Association Team)は、急性期・亜急性期に活動できる機動性を持ったチームであるが、管理栄養士は、このいずれのチームにも含まれていない。しかし、JMATは、申し入れをすれば受け入れられることも分かった。

病者は医師の診察を受けるが、診察を受けない人は、問題があるかも気がつかない。原因が栄養によることがわからずにいる。例えば、インスリン注射を施行している人が食事を6回に分けて食べており、低血糖が危惧された例や、食欲不振のまま寝込んでいる高校生が、水分過剰による低ナトリウム血症であるなどは、管理栄養士ができるアセスメント力による。これを、その日の医療チームに報告すると、専門医がインスリンの減量を勧めることになる。JMATの一員として管理栄養士が位置づけられるよう、できることを示していく必要がある。

直接・間接・遠隔支援

支援の方法は、被災者に直接会って活動する直接支援だけではなく、各現地組織である支援センター、保健センター、医療機関などの業務支援や連携を通じた活動、日本栄養士会、支援物質の協力会社などを介して行える間接支援がある。例えば、絶対的に栄養素が不足している運動部の中学生・高校生がいた。速やかに最もふさわしい食を提供しなければならないが、直接面談した人だけではなく、現地の保健センターの管理栄養士に伝え、具体的な対策を考えるな どは、間接支援である。サプリメントの使い方を保健センターや支援センターの管理栄養士に説明するなども必要なことである。

遠隔支援としては、まず避難所の炊き出し用の献立作成や困ったことの電話やメール相談も可能である。また、ボランティアに経験を伝え、被災地で栄養支援を行うための資料提供や教育ができたなら、もっと被災地で役立つ気がする。

おわりに

管理栄養士の役割は、食事支援もあるが栄養状態のアセスメントとそのケアができることが大きい。いつ起こるかわからない災害に向け、今私たちは、専門職として人を助けられるだけの準備がいる。そして、災害医療チームの一員として参加が必要であると痛感した。

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