シンポジウム

13imawari座長 
昭和大学医学部内科学講座消化器内科学部門
教授
井廻 道夫先生


13teramoto3.「動脈硬化の危険因子と食育」

帝京大学
学部長・教授
寺本 民生先生

 

動脈硬化性疾患の原因は多岐にわたり、それゆえにそれぞれは危険因子と呼ばれ、危険因子の数が動脈硬化性疾患発症の決定因子となっている。以前、わが国において最も高頻度に見られた動脈硬化性疾患が、脳血管疾患である。しかし、1960年代をピークに脳血管疾患による死亡率は減少し、最近はほぼ心血管疾患と肩を並べるところまで減少した。これは1960年代に盛んに行われた食塩摂取制限という食習慣の是正により、高血圧の頻度が減少し、それゆえに脳出血が劇的に減少したことによる。食事指導が成功したよい例である。心血管疾患については、戦後徐々に増加し、脳梗塞も2000年以降、決して減少はしていない。高血圧に変わって問題になったのがコレステロールや肥満の問題である。アメリカではすでに1960年代に心筋梗塞予防のための、禁煙指導、コレステロール低下食、食塩制限などの徹底した指導がなされた。この指導は、心筋梗塞死を50%、脳血管疾患死を60%減少させるという結果をもたらした。このように、生活習慣の改善による疾病コントロールができるという事実は極めて重要である。

本講演では、コレステロールと心筋梗塞を中心に危険因子となる根拠、並びにその対策となる食育についてまとめてみたい。

まず、動脈硬化を起こした血管壁の病理像を解析すると、そこには多量のコレステロールの蓄積が見られる。また、疫学的にもコレステロールが高いと心筋梗塞による死亡率が高くなることはわが国のデータで示されている。

コレステロールは生体にとって極めて重要な脂質である。ほとんどの細胞がコレステロール合成機能を有している。また、ヒトはステロール骨格を分解する機能を有していない。したがって、そのままの形か、胆汁酸として胆汁中に排泄するのが唯一の排泄経路である。

その胆汁酸も、小腸において90%以上が再吸収される。すなわち、われわれの体においてコレステロールは極めて貴重な脂質として維持する機構を有している。しかし、血中コレステロールの代謝平衡がいったん破たんすると、血管壁にコレステロールが蓄積し、動脈硬化性疾患を引き起こしうる。その典型例が、家族性高コレステロール血症(FH)である。FHは血中LDLの処理タンパクであるLDL受容体の遺伝子異常であり、それゆえ血中LDLコレステロールが高くなる。FHでは確実に動脈硬化性疾患を発症することからLDLと動脈硬化の関係が証明されたのであるが、同時にFHにおけるLDL除去療法により、動脈硬化性疾患を抑制できることからLDLを低下させることが動脈硬化性疾患を予防には重要であることが示された。

一方、LDL受容体の発見と同時期に、スタチンがわが国で発見され、これがLDL受容体合成亢進薬であることが解明された。スタチンを用いた大規模臨床試験は世界中で行われ、多くの試験の集大成であるメタ解析において、心血管イベント抑制効果が老若男女、洋の東西を問わず証明された。さらに、総死亡まで抑制したことより、動脈硬化治療薬としての地位を確立した。このことは、LDL受容体の合成を亢進させることが動脈硬化予防をもたらすことを意味しているのであり、動物性脂肪やコレステロール摂取などを抑制するという食事療法につながる。また、わが国は魚食を中心とした食生活を特徴とするが、魚食により心筋梗塞発症率が抑制されること、大豆イソフラボンの摂取でも動脈硬化性疾患予防効果があることなどが示されており、食育には欠かせない情報である。

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