基調講演


13takemi「第2次食育推進基本計画について-周知から実践へ-」

女子栄養大学大学院食生態学
教授
武見 ゆかり先生

 

平成17年6月に「食育基本法」が制定され、翌18年3月に最初の「食育推進基本計画」が策定され、その計画期間である5年が経過した。この間、国、都道府県や市町村、学校、保育所、農林漁業者、食品関連事業者、ボランティア団体など、さまざまな立場の関係者が独自に、或いは連携して、全国各地で食育の取組みが行われてきた。その成果と課題を受けて、食育推進会議委員、食育推進評価専門委員会委員、関係省庁により協議され、国民からもパブリックコメントを得て、今年3月31日に第2 次基本計画が決定された1)。

その基本コンセプトは、「周知から実践へ」とされた。最初の5年間は、「食育」という概念を広く国民に知ってもらい関心を持ってもらうことが主目的だったのに対し、次の5年間は、国民一人一人が、自分の食を少しでも良い方向に変えていく実践の期間に、というねらいを明確にした。その上で、食育の推進に関する施策について3つの重点方針が示された。1)生涯にわたるライフステージに応じた間断のない食育の推進、2)生活習慣病の予防及び改善につながる食育の推進、3)家庭における共食を通じた子どもへの食育の推進、である。1)は前計画から引き継いだもっとも基本的な事項であるが、2)と3)は、たくさんある食生活に関連した課題の中から、強調された点と考える。生活習慣病の増加に伴う医療費の増加は、日本社会にとって、次世代への負担の面からも大きな課題である。その生活習慣病を減らすためには予防が重要、そのためには子どもの頃からの望ましい生活習慣の形成が重要である。したがって、やはり家庭の食事が基本である、というつながりとも理解できよう。

具体的な食育の推進に関する事項としては、以下の11項目と平成27年度までの数値目標が設定された。

(1)食育に関心を持っている国民の割合の増加 70.5%⇒90%以上
(2)朝食または夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数の増加 朝食+夕食=週平均9 回⇒10回
(3)朝食を欠食する国民の割合の減少 子ども 1.6%⇒ 0 %、20~30歳代男性 28.7%⇒15%以下
(4)学校給食における地場産物を使用する割合の増加 26.1%⇒30%以上
(5)栄養バランス等に配慮した食生活を送っている国民の割合の増加 50.2%⇒ 60%以上
(6)内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)の予防や改善のための適切な食事、運動等を継続的に実践している国民の割合の増加 41.5%⇒50%以上
(7)よく噛んで味わって食べるなどの食べ方に関心のある国民の割合の増加 70.2%⇒80%以上
(8)食育の推進に関わるボランティアの数の増加 34.5万人⇒37万人以上
(9)農林漁業体験を経験した国民の割合の増加 27%⇒30%以上
(10)推進計画を作成・実施している市町村の割合の増加 40%⇒100%

これらのうち、(2)と(7)は新規の項目である。(6)は最初に述べた基本コンセプト「周知から実践へ」の具体的な一例である。前計画では、メタボリックシンドロームを「認知している国民の割合の増加」だったが、平成22年度現在、言葉も意味もだいたい知っている者が90%に達している。そこで、生活習慣病予防のためにも、「実践している国民の割合」という目標項目となった。

以上の、第2次基本計画策定に向けての検討過程で、私たちは、内閣府「食育の現状と意識に関する調査報告(平成21年度)」データの再解析結果を提示した2)。その中で、同じ家族との共食でも、朝食の共食は、望ましい食習慣(欠食しない、バランスの良い食事をする、野菜料理を多く食べる)と関連し、夕食の共食は食に関連したQOL(食事が楽しい、おいしい、食卓の雰囲気は明るい、食事に満足している、など)と関連していることを示した。内閣府の平成22年度の調査でも、共食に伴う利点として最も多かったのは、「家族とのコミュニケーションを図ることができる」で81.1%、次いで「楽しく食べることができる」66.2%であった。また、「規則正しい時間に食べることができる」35.4%、「栄養バランスの良い食事を食べることができる」34.0%と、望ましい食習慣との関連も重視されていることがわかる。このような検討や実態をふまえて、家族との共食が重点方針の1つに位置づいたのだが、一方で、その解決や実現に向けては「食育」の範囲を超えた経済格差や社会不安の問題があるという指摘や議論も多くなされた。共食の前に、「ワークライフバランスや、母子家庭・父子家庭、貧困等を改善するなど、まずは社会のあり方を見直す政策を」といったパブリックコメントが多く寄せられたことも事実である。

今後の食育推進基本計画の「実践」に向けては、こうした社会の根底的な問題も見据えた取組みが必要であろう。このことは、東日本大震災が起きた現在、尚更、大きな課題となったように思う。また、この震災を通じて、改めて食が生きる上の基本であるという思いを強くした人も多いだろう。深刻な被災を受けた宮城県東松島町の行政栄養士がメールの中で、「今回の震災で、“命をつなげる食事”と“健康を考える食事”の違いを体験しました」と書いていたが、その意味を、食育との関わりで、改めて考える必要を感じている。

参考文献

1) 内閣府 平成23年度食育白書, 2011

2) (第2期・第5回食育推進評価専門委員会資料より) 次期「食育推進基本計画」策定に当たっての各委員からの意見等(平成23年8月15日アクセス)

 

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