講演2

Lec2 Teramoto座長 
川崎医療福祉大学 医療技術学部臨床栄養学科 学科長・教授
寺本 房子


Lec2 Kido12.「栄養素のバランスと健康」

京都府立大学大学院生命環境科学研究科 教授
木戸 康博

 健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義されます。日本人の健康寿命は、平成22年で、男性は70.42年、女性は73.62年、平成25年で、男性は71.19年、女性は74.21年です。平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味し、男性9 年、女性12年となっています。日本人の平均寿命や健康寿命は、世界でも高い水準です。これには、日本人の食事が一助になっていると考えられます。

 「健康な食事」とは、特定の栄養素や特定の成分を指すものでも、健康に良いとのうたい文句で出回っている特定の食品を指すものでもありません。日本の食事の特徴は、気候と地形の多様性に恵まれ、季節ごとに旬の食べ物があり、また地域ごとに特産物があり、こうした多様な食べ物を組合せて、調理して、美味しく食べることで、バランスのとれた食事を摂ってきたことにあります。「健康な食事」は、人々の生活の営みやその環境にある食文化などによって成り立っています。

 「健康な食事」とは、健康な心身の維持・増進に必要とされる栄養バランスを基本とする食生活が、無理なく持続している状態を意味しています。「健康な食事」の実現のためには、日本の食文化の良さを引き継ぐとともに、おいしさや楽しみを伴っていることが大切です。おいしさや楽しみは、食材や調理の工夫、食嗜好や食事観の形成、食の場面の選択など、幅広い要素から構成されています。「健康な食事」は、地域の特性を生かした食糧の安定供給の確保や食生活に関する教育・体験活動などの取組みと、国民一人ひとりの日々の実践とが相乗的に作用することで実現し、食をめぐる地域力の維持・向上とともに、国民の健康とQOLの維持・向上に着実に貢献するものです。

 日本人が健康な生活が送れるように、栄養の過不足が原因である病気にならないために、「何をどれだけ食べたら良いか?」を示したもの(日本人の食事摂取基準(2015年版))が厚生労働大臣により告示されています。人は、食品や料理を食べていますが、身体は食品や料理に含まれている栄養素を利用しています。また、1 つの栄養素は複数の食品に含まれています。さらに、1つの食品には複数の栄養素が含まれています。したがって、食事摂取基準では、栄養素毎の必要量が示されています。

 栄養素で示された「何をどれだけ食べたら良いか?」を実践するための基本は栄養バランスです。食品の選択や調理の際には、食品の種類や量、それらの組合せに関する適切な情報が必要です。食事づくりや食べる場面では、一回の食事単位の料理の組合せに関する情報が必要となります。それが「主食、主菜、副菜」です。主食、主菜、副菜を基本とすることにより、多様な食品を組合せ、必要な栄養素をバランスよく摂ることができます。主食、主菜、副菜のそろう食事は、学校給食や社員食堂など、様々な場面で展開されています。栄養バランスの良い食事の目安として、お弁当を例に考えてみましょう。お弁当箱に隙間なく料理を詰めると、お弁当箱に表示されている容量(mL)がそのお弁当のエネルギー量に相当します。例えば、600mLであれば600kcalに相当します。 そして、お弁当箱を6 等分して、その3 にあたる部分(全体の6 分の3 )に主食(ごはんなど主にエネルギー源になるもの)を、残りの1 にあたる部分(全体の6 分の1 )に主菜(肉、魚、卵、ダイズ製品など主にたんぱく質源になるもの)を、残りの2 にあたる部分(全体の6 分の2 )に副菜(野菜、きのこ、海藻など主にビタミン・ミネラル源になるもの)を詰めると、栄養バランスの良い食事になります。毎回の食事をお弁当箱に詰めたらどうなるかを想像してみて下さい。主食:主菜:副菜の比率を3 : 1 : 2 にするように心がけて、「健康な食事」を実践してみませんか?

 

1 2 3 4 5 6
  • ごはんだもん!げんきだもん!~早寝・早起き・朝ごはん~
  • ダノングループ・コーポレートサイト

ページトップへ戻る