基調講演

Key.Lec.Imawari座長 
公益財団法人ダノン健康栄養財団 理事長
新百合ヶ丘総合病院消化器・肝臓病研究所 所長
井廻 道夫


Key.Lec.Morishita「科学的エビデンスに基づいた食品の機能表示」

大阪大学大学院医学系研究科 教授
内閣府規制改革会議委員
森下 竜一

 

 機能性表示解禁の背景
 薬事法により規制される医薬品の他に、健康増進法で定められた保健機能食品(栄養機能食品、特定保健用食品:トクホ、特定用途食品)があり、それ以外の枠の部分にいわゆる健康食品がある。健康食品は法律的観点からすると通常の食品となんら変わらず、法的な仕組みの外にあり、効果のような文言は書くことができなかった。そのため、膝を回すようなイメージ広告や個人の感想といった抽象的な広告が中心であり、消費者が購入に必要な情報が提供されてこなかった。
 アメリカやEUなど諸外国では機能性表示は一般的であり、機能性表示ができない国は少数である。日本では禁止されている結果、本物が分からない状況に陥っている。事実、消費者からの問い合わせで圧倒的に多いのは商品の成分や摂取方法等に関するもので、これらの質問には事業者は回答することは薬事法違反にあたることになり、消費者のニーズとマッチしていなかった。消費者委員会のアンケートでも、6 割の方が機能性表示を希望していることがわかり、日本も機能性表示の解禁が2015年4 月より始まった。本制度は、機能性表示食品制度と呼ばれることが決まり、食品表示法によって定められ、消費者庁への事前届け出により販売される第三の食品制度として開始された。
 機能性表示解禁によって、セルフケア・セルフメディケーションが拡充でき、医療介護費の抑制にもつながると考えられている。実際米国では、機能性表示解禁後、脳梗塞や心筋梗塞の減少、がんの減少など医療費削減が報告されている。
 
 機能性表示食品制度
 新制度は企業等の責任において事前届け出により機能性表示を行うことになっている。機能性表示においては、科学的なエビデンスが条件とされ、消費者庁のガイドラインでは、最終商品でのトクホに準じたヒト試験か研究レビューかが条件とされている。研究レビューにおいては、健常者あるいは境界域を対象としたヒト臨床試験の論文を評価し、病者である患者を利用したデータは利用できない。詳細は、消費者庁のHPを見ていただきたい。私が理事を務めている日本抗加齢協会では、機能性表示健康食品のデータブックの編集を進めており、研究レビューの作成などを請け負っている。興味がある方があれば、事務局まで問い合わせいただきたい。
 一方で、1 )成分や原料の安全性:製品中の成分の安全性の確保、2 )製造基準:品質の確保、3 )表示とクレーム、4 )有害作用報告、がセットになっている。今回の機能性表示食品では、GMPやHACCPなどの生産での品質管理に加え、製品規格基準の採用が必須とされており、現行の健康食品よりは品質の高い機能性表示食品が登場することになる。また、健康被害情報の届け出なども、窓口の一本化など消費者に分かりやすい形で整備する必要があることが決められている。
 
 農林水産物の機能性表示
 農林水産物およびその加工物に関しても機能性表示を認めることに決定している。農作物では、ヒト観察研究での研究レビューで機能性表示が可能になっている。
 
 おわりに
 米国でサプリメントの機能性表示を規定している栄養補助食品健康教育法は、国民をエディケーションすることが大きな目的である。日本の機能性表示解禁も、国民自らが健康情報を学び、健康に対する関心を高めてもらい、健康寿命の延伸につなげるのが大きな狙いである。
 
 
 

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