メールマガジン「Nutrition News」 Vol.118
「日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方(1)―日本人の長寿を支える「健康な食事」のとらえ方―」
 「平成25年簡易生命表」によると、日本人の男性の平均寿命は80.21年と、はじめて80年を超えました。女性の平均寿命は86.61年であり、男女ともに過去最高を更新しています。国別の平均寿命でも、日本は男性、女性ともにトップクラスです。この背景として考えられる要因の一つが、日本人の食事です。日本の食事は、気候と地形の多様性に恵まれ、季節ごとの食べ物や地域ごとの産物があり、これらの多様な食べ物を組み合わせて調理し、おいしく食べることで、バランスのとれた食事をとってきたことに特徴があります。
 厚生労働省は、日本人の長寿を支える「健康な食事」とは何かを明らかにし、日本人の食事の特徴を踏まえた「健康な食事」の目安を提示・普及することで、国民や社会の「健康な食事」への理解を深め、「健康な食事」に取り組みやすい環境整備が図られるよう、検討会(日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会:座長 中村丁次神奈川県立保健福祉大学学長)を立ち上げました。栄養学、医学をはじめとした様々な領域の専門家によって幅広い視点から検討が重ねられ、平成26年10月にその報告書が公表されました。 

日本人の栄養・健康状態の変遷

 戦後の日本の大きな健康・栄養課題は、栄養不良による身体症候でした。腱反射消失などの有所見率は1950年代~60年代には2割程度見られました。しかし、1950年代~70年代にかけて、エネルギー摂取量が増加するとともに、たんぱく質、脂質の摂取量が増加し、炭水化物の摂取量は減少しました。食物摂取では、穀類エネルギー比率が減少し、肉類や果実類の摂取が増加しました。このような変化にともない、日本人の健康・栄養課題は、栄養不良から肥満へと移行していったのです。  
 つまり、現在高齢者に該当する世代は栄養不足の時代に20~40歳代を過ごし、現在の40歳代は、20歳代の頃から既に栄養過剰や栄養バランスの偏りが見られる中で過ごしてきたということです。日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方は、こうした背景も踏まえて検討されました。 

ライフステージごとの「健康な食事」のあり方

 「健康な食事」は、身体状況(健康の維持・増進、疾病予防)、栄養素摂取、食品(種類・組み合わせ)、料理、調理、食べ方、おいしさ、食べる楽しみ、食料生産・流通、地域性、食文化等、実に多様な要素から成り立っています。これらを食に関わる行動の面から整理すると、「食べる」「つくる」「伝え合う」の大きく3つに分けることができます。
① 食べる:何を、どのように、誰と食べるのか
② つくる:調理だけでなく、食品を選択したり、食事の準備をしたり、食卓を整えたりすること
③ 伝え合う:食に関する知識や技術、情報を共有したり、学んだり、教えたりすること
 これらは複合的な行動や状況から構成されており、様々な背景によってそのあり方も変わってきます。例えば、子どもでは、「朝、昼、夕の三食必ず食べることに気をつけている」と9割近くの子どもが回答する一方で、食事作りや共食などの生活体験が乏しい子どもが見られ、子どもの貧困など社会経済的な課題も生じています。成人では、男性で肥満者が3割を占める一方、20歳代の女性ではやせの割合が2割を占めています。外食の頻度が高い、20歳代の単独世帯が6割を超えるなどの状況も見られます。高齢者では、低栄養や要介護認定者数の増加が問題視されています。この世代では食事に関する意識や実践(主食・主菜・副菜のそろう食事など)は良好である一方で、単独世帯の割合が増加し、家族や友人と楽しく食卓を囲む機会の少ない人も見られます。
 こうした特徴を踏まえ、報告書では、ライフステージごとの「健康な食事」のあり方の例を示しています(図1)。  
 いずれのライフステージにおいても、望ましいあり方を無理なく続けるためには、社会環境の整備も必要です。
 
図1 ライフステージごとの「健康な食事」のあり方の例
vol118 zu1
 
 『日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 報告書』より
 

日本人の長寿を支える「健康な食事」のとらえ方

 平成25年6月の検討会発足以降、日本人の長寿を支える「健康な食事」の概念や意義について、食事をめぐる状況の変遷や諸外国との比較、各領域における考え方や取り組みなどから全体を俯瞰し、今後の社会や望ましいあり方を見据え、検討が重ねられてきました。そして、「健康な食事」のとらえ方として、それを構成する様々な要因(図2)を踏まえ、次のように整理されました。

****【日本人の長寿を支える「健康な食事」のとらえ方】****

 「健康な食事」とは、健康な心身の維持・増進に必要とされる栄養バランスを基本とする食生活が、無理なく持続している状態を意味する。

  「健康な食事」の実現のためには、日本の食文化の良さを引き継ぐとともに、おいしさや楽しみを伴っていることが大切である。おいしさや楽しみは、食材や調理の工夫、食嗜好や食事観の形成、食の場面の選択など、幅広い要素から構成される。

  「健康な食事」が広く社会に定着するためには、信頼できる情報のもとで、国民が適切な食物に日常的にアクセスすることが可能な社会的・経済的・文化的な条件が整っていなければならない。

 社会全体での「健康な食事」は、地域の特性を生かした食料の安定供給の確保や食生活に関する教育・ 体験活動などの取組と、国民一人一人の日々の実践とが相乗的に作用することで実現し、食をめぐる地域力の維持・向上とともに、国民の健康とQOLの維持・向上に着実に貢献する。
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図2 日本人の長寿を支える「健康な食事」を構成している要因例
vol118 zu2『日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 報告書』より
 
 
 
参考

・日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 報告書 (厚生労働省)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000059935.html

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