メールマガジン「Nutrition News」 Vol.117
健康・栄養に関する学術情報

肝臓時計の新規同調因子として働くインスリンと生活習慣病予防 腹時計の大切な働き
 
 多くの生命活動には周期性(年・月・日単位など)があります。体の各細胞に時計遺伝子があり時を刻んでいることが明らかとなり、「時間生物学」と呼ばれる分野が急速に進展してきました。また、食品摂取のタイミングと体内時計や疾病の発生との関連を研究する「時間栄養学」も盛んになってきました。そして、生活習慣病の発生については「何を食べるか?」だけではなく、「いつ食べるか?」が重要であることもわかってきました。 概日リズム(大体1日のリズム)は自然の1日周期と約1時間のズレを生じ、朝の光がそのズレをリセットすることは広く知られています。ところが最近の研究で、確かに中枢の主時計(脳内の視交叉上核に存在)をリセットするのは光であるが、内臓の体内時計をリセットするのは食事であることがわかってきました。 今回は、食事がどのように体内時計に影響するのかについての研究を解説した論文を紹介します。

 時計遺伝子を欠損させるとマウスは、行動異常を示すだけでなく代謝異常を導くことがわかってきました。Clock遺伝子をノックアウトしたマウスは肥満とメタボリックシンドロームを示します。筆者らは遺伝的改変をしていない動物を用いて、不規則な食事をさせると肝臓の概日時計に異常が生じ、血中コレステロールが上昇するということを見いだしました。  
 また、 最近筆者らは、食事刺激に応答するインスリンが肝臓時計を同調させる因子であることを示すことに成功しました。培養肝細胞を用いて示すとともに、動物個体の肝臓時計においても同様であることを明らかにしました。そして、同じインスリン投与も朝と夜では、その効果が逆に出ることが明らかとなりました。朝食は肝臓時計を正常化させるが、夜食は肝臓時計を乱してしまうということです。
 さらに、インスリンは脂肪細胞の時計も同調させることがわかりました。つまり、メタボリックシンドロームに関与する主な臓器はインスリンによって、その時計が調節されているということです。「活動期に食べて休息期に食べない」、「活動期の最初に食事(朝食)をとること」が健康的な食スタイルであることを示す結果でした。

 参考

  
 詳細は下記論文をご参照下さい。
 
 小田裕昭
 「肝臓時計の新規同調因子として働くインスリンと生活習慣病予防  
  腹時計の大切な働き」
 化学と生物 Vol. 51, No. 8 (2013) 518-520
 
 本論文はJ-STAGEにてオンライン公開されており無料で閲覧出来ます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/51/8/51_518/_pdf
  • ごはんだもん!げんきだもん!~早寝・早起き・朝ごはん~
  • ダノングループ・コーポレートサイト

ページトップへ戻る