2015年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
 日本人小児のビタミンD不足の実態調査と国民への啓発
 東京大学大学院 医学系研究科 小児医学講座
 
北中 幸子 先生

 ビタミンDは、食物で摂取あるいは紫外線により皮膚で合成され、生体内のカルシウム恒常性維持に必須の栄養素である。ビタミンD欠乏による小児のくる病が世界的に増加していることが注目されており、国内でも10年ほど前から顕著に増加している。海外では人口の20~80%がビタミンD不足であるという報告が出されており、乳幼児にビタミンD補充が推奨されている。ところが日本では調査が少なく、成人では47~75%が不足しているといわれるが、小児の実態は明らかでない。ビタミンD不足の増加の原因として、母乳栄養の推進、紫外線不足、アレルギー等による食事制限がある。さらに東日本大震災後は、放射能の不安から、外出を控える児が増加している。また、乳児用のビタミンDサプリメントが発売され、その有用性が期待されているが、ビタミンD欠乏症の実態が把握されていないため、日本人でも海外と同様にその使用を推奨すべきかどうか、不明である。そのため、日本人小児のビタミンD欠乏の実態把握が急務である。そこで、本研究では、日本人小児のビタミンD欠乏症の実態を把握することを目的とし、大規模データを利用したビタミンD欠乏性くる病の患者数解析を行った。

要旨

 今回、小児ビタミンD欠乏性くる病の有病率の10年間の推移を明らかにすることを目的とし、大規模レセプトデータを用いて解析を行った。日本医療データセンター(以下JMDC)が保有するレセプト情報を使用し、2005年から2014年の期間で0歳から15歳の者を対象とした。各年の患者数と対象者数をもとに年有病率(人口10万対)を算出し、10年間の傾向を分析した。15歳以下のビタミンD欠乏性くる病の年有病率は、2005年の1.1(人口10万対)から年々増加し2014年は12.3(人口10万対)に達していた。本研究からこの10年間に小児ビタミンD欠乏性くる病患者数が顕著に増加していることが示唆された。ビタミンD欠乏に関して、国民への情報の周知とともに、日本でも海外と同様に乳児へのビタミンD補充など何らかの対策が必要と考える。

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