メールマガジン「Nutrition News」 Vol.144
2014年度ダノン学術研究助成金受贈者による研究報告
ヨーグルトの長期投与が健常人の空腹時及び食後の血糖値に及ぼす影響
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科  

倉貫 早智 先生
 2型糖尿病の発症に関しては、30~40%が遺伝因子であると報告されています。近年、2型糖尿病と関連する遺伝子が70以上同定されており、この中には日本人に影響を及ぼすSingle Nucleotide Polymorphism(SNP)も存在します。しかしながら、すべての糖尿感受性遺伝子のSNPsが日本人に影響するわけでなく、さらに個人のSNPsの保持頻度も異なります。また、日本人を含むアジア人は、他の民族と比較してインスリン感受性が高いもののインスリン分泌量が著しく低いことがメタアナリシスによって明らかになっています。そのため、日本人はヨーロッパ人と比較してBMIが低いにもかかわらず糖尿病を発症しやすいです。これは、日本人に影響を及ぼす糖尿病感受性遺伝子が関連していると推測されます。
 一方、海外のメタアナリシスでは、乳製品摂取量に伴い2型糖尿病リスクを減少させるとの報告や、ヨーグルトの6ヶ月間の長期的介入がインスリン、HOMA-IRを改善することが報告されています。しかしながら、日本人を対象にしたヨーグルトの介入試験や食事とSNPsの相互作用による報告は皆無です。
 そこで本研究は日本人の健常者を対象に、ヨーグルトを4週間投与しました。また、糖尿病感受性遺伝子の解析を行い、ヨーグルトの摂取が生活習慣病予防にもたらす効果について検証しました。
 

要旨

 本研究では、4週間のヨーグルト摂取に関する介入を行い、日本人における食後の糖代謝と、糖尿感受性遺伝子のSNPsとの関連とともに検討を行った。

(方法)研究デザインは単群による介入試験で、4週間無脂肪ヨーグルトを150 g/ day摂取させた。食後血糖コントロールは、炭水化物50gに調整した食品の組み合わせが異なる2種類の試験食(「ごはん」、「まぐろとろろご飯」)を用いて評価を行った。糖尿病感受性遺伝子の5つのSNPsは、Hybprobe assayで同定した。

(結果)糖尿病感受性遺伝子のGenetic risk score(以下、”GRS”)によって 2群間に分け、GRSが高い者(以下、“H-GRS群”)とGRSが低い者(以下、“L-GRS群”)について群間比較を行った。介入前の「ご飯」「まぐろとろろご飯」摂取時の食後血糖値は、“H-GRS群”では“L-GRS群” と比較して統計学的有意に高い値を示した(P<0.05)。インスリン値も同様に“H-GRS群”と “L-GRS群” で比較したところ、ヨーグルト介入前に「ご飯」摂取時にのみ、“H-GRS群”で低い傾向が見られた(P=0.088)。一方、ヨーグルト介入前後のインスリン値の比較では、介入後は介入前と比較して低い値であった。

(結論)ヨーグルトの継続的な摂取は、糖尿病感受性遺伝子のGRSが高い者でも、食後の血糖上昇を抑え、2型糖尿病に関連するリスクを低減できることが明らかになった。 

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