メールマガジン「Nutrition News」 Vol.136
「健康食品による健康被害を防ぐために」
 市場には様々な「健康食品」が出回っており、今や国民の約半数がこれらを利用しているという調査結果もあります。その一方で、健康食品によって健康を害するケースもしばしば見られ、その情報の多くは消費者の目に触れにくいのが現状です。
 平成27年12月、食品安全委員会は、健康食品による「避けることのできる健康被害」を防ぐことを目的とし、健康食品の摂取について判断する際に考えるべき事項を「いわゆる『健康食品』に関するメッセージ」としてとりまとめました。

健康食品の摂取状況

  各種調査の結果によると、健康食品を摂っている人の割合は、国民の4~6割程度と考えられており、女性の方が男性に比べ摂取割合が高いとされています。健康食品を摂取する主な目的は、健康の維持・増進、栄養補給、疾病予防、美容、ダイエットなどであり、健康な成人だけでなく、高齢者や子ども、妊婦、病者など幅広く利用しています。なお、病者を対象とした調査では、入院患者の2~3割、外来患者の4割近くが健康食品を摂っており、摂取者の2~4割程度は、健康食品を処方薬と併せて摂っていたとの結果がでています。
 一方で、健康食品として摂取されている食品によって体の不調があったとする割合は、摂取者の約4%という調査結果があります。健康被害の種類として頻度が高いものに、発疹などのアレルギー症状、胃部不快感や下痢などの消化器症状、頭痛・めまい、肝障害などが挙げられます。

健康食品のリスク要因

 どのような食品にもリスクはあり、健康被害を起こす可能性があるのは健康食品に限ったことではありません。つまり、健康食品のリスク要因は、通常の食品にもあるリスク要因と、健康食品の特性から生じるリスク要因に分けられます。

●食品としてのリスク要因  
 一般的に、リスクは「量の問題」と考えられており、安全とされる食品でも過剰摂取により健康被害は起こり得ます。また、微生物や化学物質に汚染されたことによって健康被害を起こす可能性もあります。
●健康食品の特性から生じるリスク要因  
 健康食品の中には、通常は食品として摂られていないような成分が含まれていたり、成分の濃縮などにより通常では摂ることのできないような多量の成分が含まれていることがあります(製品側の要因)。また、健康効果を期待して、特定の成分を多量・高頻度・長期間摂取しやすいことや、「食品だから安全である」との誤認が過剰摂取につながりやすいことなどが挙げられます(摂取者側の要因)。さらに、健康食品の中には、利用者の体験談や、特定の研究者だけが主張している内容などを安全性や有効性の根拠としているものもある一方で、摂取者がそれを知ることは難しく、また、健康被害についての情報も得にくいなどの要因も考えられます(情報に関する要因)。

19項目のメッセージ

 健康食品を摂るかどうかは、個々の判断に委ねられるものです。しかし、健康増進のために費用をかけて摂られる健康食品により、健康被害が出るべきではありません。食品安全委員会は「いわゆる『健康食品』に関するメッセージ」の中で、消費者が健康食品の安全性について
考える際の基本的事項や、健康食品による健康被害を疑ったときの対応などについて、次の19項目にまとめて提示しています。

① 「食品」でも安全とは限りません。
② 「食品」だからたくさん摂っても大丈夫と考えてはいけません。
③ 同じ食品や食品成分を長く続けて摂った場合の安全性は正確にはわかっていません。
④ 「健康食品」として販売されているからといって安全ということではありません。
⑤ 「天然」「自然」「ナチュラル」などのうたい文句は「安全」を連想させますが、科学的には「安全」を意味するものではありません。
⑥ 「健康食品」として販売されている「無承認無許可医薬品」に注意してください。
⑦ 通常の食品と異なる形態の「健康食品」に注意してください。
⑧ ビタミンやミネラルのサプリメントによる過剰摂取のリスクに注意してください。
⑨ 「健康食品」は、医薬品並みの品質管理がなされているものではありません。
⑩ 「健康食品」は、多くの場合が「健康な成人」を対象にしています。高齢者、子ども、妊婦、病気の人が「健康食品」を摂ることには注意が必要です。
⑪ 病気の人が摂るとかえって病状を悪化させる「健康食品」があります。
⑫ 治療のため医薬品を服用している場合は「健康食品」を併せて摂ることについて医師・薬剤師のアドバイスを受けてください。
⑬ 「健康食品」は薬の代わりにはならないので医薬品の服用を止めてはいけません。
⑭ ダイエットや筋力増強効果を期待させる食品には、特に注意してください。
⑮ 「健康寿命の延伸(元気で長生き)」の効果を実証されている食品はありません。
⑯ 知っていると思っている健康情報は、本当に(科学的に)正しいものですか。情報が確かなものであるかを見極めて、摂るかどうか判断してください。
⑰ 「健康食品」を摂るかどうかの選択は「わからない中での選択」です。
⑱ 摂る際には、何を、いつ、どのくらい摂ったかと、効果や体調の変化を記録してください。
⑲ 「健康食品」を摂っていて体調が悪くなったときには、まずは摂るのを中止し、因果関係を考えてください。

 食品の機能性研究が発展し、健康に資する様々な機能性成分が明らかになるとともに、健康食品の市場も拡大してきました。また、現在はインターネットの普及等により、多くの情報を容易に得ることができますが、それらの情報は「玉石混淆」です。私たちには、科学的な考え方をもち、信頼できる情報に基づいて健康食品を捉えることが求められていると言えるでしょう。

※本文中の「健康食品」は「健康への効果やダイエット効果をうたって販売されている食品」を指し、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品も含まれています。また「サプリメント」は、カプセル・錠剤・粉末・顆粒形態の健康食品を指しています。
 
参考
いわゆる「健康食品」に関する報告書(食品安全委員会)
http://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.data/kenkosyokuhin_houkoku.pdf
いわゆる「健康食品」に関するメッセージ(食品安全委員会)
http://www.fsc.go.jp/osirase/kenkosyokuhin.data/kenkosyokuhin_message.pdf

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