メールマガジン「Nutrition News」 Vol.134
第17回ダノン健康栄養フォーラムより
栄養素のバランスと健康
京都府立大学大学院生命環境科学研究科
教授 木戸康博 先生
 食事は、私たちの体を作るとても重要なものです。もしも食事をとらなかったら、私たちは生命を維持することができません。一方で、毎日の食事のとり方が間違っていれば、健康障害が発生するリスクが高くなります。「バランスの良い食事」をとることが重要です。
  これまで、栄養素のバランスを評価する指標の1つとして「PFC比率」が使われてきました。しかし、タンパク質、脂質、炭水化物だけでなく、アルコールもエネルギーを産生します。そこで、日本人の食事摂取基準(2015年版)では、アルコールを炭水化物に含めた「エネルギー産生栄養素バランス」として、タンパク質:13~20%エネルギー、脂質:20~30%エネルギー、炭水化物:50~65%エネルギーと設定されました。
  栄養素は、摂りすぎても不足してもいけません。管理栄養士・栄養士は、専門職として栄養素のバランスをとることを、一般の方にしっかりと説明する必要があります。しかし「タンパク質をこれだけとってください」というような伝え方をしても、多くの方は食品のエネルギーや、含まれるタンパク質の量を知りません。管理栄養士・栄養士には「栄養素のバランス」をいかに「食事のバランス」に置き換えて伝えるかが求められます。

「バランスの良い食事」をどう伝えるか

 「バランスの良い食事」の目安は「弁当箱」で考えると分かりやすくなります。
 「弁当箱の容量(ml)≒その食事のエネルギー」になるため、弁当箱の容量で摂取エネルギーを概ね推測することができます。そして、弁当箱に、主食を全体の3/6、副菜を2/6、主菜を1/6になるように詰めると、栄養バランスの良い食事になります。食卓に並んだ食事を弁当箱に詰めたらどうなるかをイメージし、主食:副菜:主菜=3:2:1になるように心がけることを指導すると良いのではないでしょうか。
  バランスの良い食事を毎食とることができれば理想的ですが、外食などでどうしても偏ってしまうこともあるでしょう。そのような時には、1日3食の中で調節するようにします。それも難しければ、2~3日、或いは1週間の単位で調整することが大切です。
  エネルギーのバランスがとれているかどうかは、毎日同じ条件で(起床後、トイレに行った後、下着で)体重を測定し、それを記録していくことで分かります。体重の増加は食べ過ぎていることを、体重の減少はエネルギーが足りないことを示しています。体重をモニターしながら、バランスの良い食事を習慣づけることを、ぜひ推奨していただきたいと思います。
 

具体的な提案を
 

   対象者の食事内容をみて「足りないものは何か」「何を足せば栄養バランスが良くなるのか」を具体的に伝えることも大切です。例えば、朝食が紅茶と食パンだけの方には、野菜や卵やチーズなどをプラスしてバランスを良くすることを、昼食にラーメンを食べる方には、タンメンなどを選んで野菜をとることなど提案するということです。
  また、アルコールや菓子など嗜好品は高エネルギーのものが多く、とり過ぎには注意が必要です。しかし、これらには「ストレス解消」や「リラックス」といった側面もあります。我慢するだけではなく、とり過ぎないための一工夫を提案したいものです。アルコールなら「瓶や缶のサイズをダウンする」、お菓子なら「すぐ手の届くところに置かない」など、色々な工夫をすることができます。
  なお、間食は「おやつ」ではなく、食事の一部(不足しがちな栄養を補うための食事)と捉えます。働きざかりの世代では夕食が遅くなる方も多いですが、空腹が長く続いた後に食事を多くとると血糖値が上がりやすく、体に悪影響を及ぼします。そこで、残業前に栄養を補えるものを少しとり、帰宅後の夕食を低カロリーに抑えるなど「かしこい間食」を提案していただきたいと思います。血糖値のコントロールという観点では、食事のタイミング(空腹時にいきなり食べ過ぎない)、食べる順番(野菜などから先に食べる)、食事の内容(食物繊維の多いものと食べる)、低GIのもの(血糖値を上昇させにくいもの)を選ぶことなども大切です。

「食べる幸せ」も伝えたい

  平安・鎌倉時代の絵巻物である鳥獣戯画には、動物が食べ物を囲んで踊っているところが描かれています。いつでも、幸せの真ん中には食べ物があり、そして食べられる幸せ、みんなで食べる“共食”という幸せがあります。管理栄養士・栄養士は、そのようなことも含めた「健康な食事」を、広く伝えていかなければならないのではないかと思っています。
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