これまでの研究で、細胞老化は、細胞分裂に伴うテロメア短縮、各種ストレス及びDNA傷害により誘導されることが明らかとなっていますが、最近になり、炎症性サイトカインを含む可溶性因子がその誘導に不可欠な役割を担っていることが明らかとなり、細胞老化の、組織や細胞の種類にとらわれない、全身性疾患への寄与が推測されるようになってきました。
また、この細胞老化の生体内における機能性も長い間推測の域を出ないものでしたが、最近になり、細胞老化が動脈硬化に伴う血管の脆弱化、組織幹細胞の老化及びガン抑制に対し機能していることを示す直接的な証拠が相次いで発表され、生体内での老化細胞の機能性とその制御を目指した研究が注目を集めています。
本研究では、食品と接しうる組織として腸管を想定し、腸管上皮細胞モデルとしてヒト大腸癌由来Caco-2細胞を用いました。細胞老化誘導シグナルとして知られる酸化ストレス及び炎症性サイトカインは、ヒト正常線維芽細胞に対してと同様、Caco-2細胞に対しても細胞老化を誘導することが、細胞老化マーカーを用いた解析から明らかとなりました。
また、ここで細胞老化誘導されたCaco-2細胞は、IL-6を含む炎症性サイトカイン発現を増強していること、さらには細胞内活性酸素蓄積を増強していることが明らかとなり、IL-6発現及び細胞内活性酸素蓄積が腸管上皮細胞の老化状態を規定するマーカーになり得るものと考えられました。さらにIL-6により誘導されるCaco-2細胞の老化を抑制しうるプロバイオティクス乳酸菌を、老化マーカーとして知られるSenescence-associated β-galactosidase活性を指標にスクリーニングしたところ、多くのプロバイオティクス乳酸菌がCaco-2細胞の老化を抑制しうる活性を有することが明らかとなりました。
今後はその分子機構と腸管老化抑制プロバイオティクス乳酸菌の機能性について、さらに詳細に解析を進める必要があると考えております。