講演1

16osaka teramoto座長 
川崎医療福祉大学 医療技術学部臨床栄養学科
学科長・教授
寺本 房子


16osaka yamori1.「日本人の健康寿命は乳製品で延ばせるか?」

武庫川女子大学国際健康開発研究所 所長
家森 幸男

 地球上の伝統食を持つ国々で、今、都市化、工業化が進み、加工食品が増え、塩と脂の摂取が多くなり、未来を担う人々の健康が危ぶまれます。世界の60を超える地域で20年をかけた研究で、毎日の食事が、健康を支える大きな働きをすることが分かりました。
 日本は世界一長寿で、女性は87歳で20年以上トップの座にあり、かつてはトップの男性は、80歳で世界の第8位です。
 日本国内ではトップであった沖縄に代わり、今や長野県が男女共トップで、遺伝よりも環境、そして食の環境を変えうる食育が大切で、教育県といわれる長野は食生活改善の努力で平均寿命トップの座を獲得したのです。
 長野県でかつて多かった脳卒中は、これを100%起こす遺伝子をもったラットの私共の実験で、大豆、魚、野菜などの成分を含む食事により、脳卒中が防げることを実証しています。長野県は食塩摂取はなお多いですが、野菜の摂取量は男女とも第1位で国の目標値1日350gを超えています。 世界の長寿地域、コーカサス、シルクロード、沖縄、広州、ハワイなどを調査し、食事と健康長寿の関係が分かりました。
 日本は、先進国の中で寿命に影響する心筋梗塞が一番少ないから世界一長寿なのです。今や世界中で肥満が増え、開発途上国のアフリカでも、大都会の半数以上の人が肥満になっています。
 肥満は心筋梗塞のリスクですが、日本では、肥満も少なくコレステロールも低いから心筋梗塞が少ないのです。また、同じコレステロールの値でも、心筋梗塞の死亡率は、女性は男性の半分以下です。これは女性ホルモンのおかげで、閉経後は、血圧やコレステロールが上がります。 しかし、私共の研究で大豆を食べる地域では、閉経後も血圧などがあまり上昇していないことが明らかになりました。まさに、大豆には女性ホルモンの働きをするイソフラボンが含まれ、大豆の常食が日本人の寿命を支えてきたのです。
大豆イソフラボンは、肝臓での悪玉コレステロールを処理しやすくし、また、血管の裏打ちをしている内皮細胞は血管を拡張させ、血栓を作らせない一酸化窒素を作りますが、それを助けるのが、女性ホルモン作用のあるイソフラボンなのです。この一酸化窒素は活性酵素で壊れるので、抗酸化力のある野菜、果物、海藻、お茶などを大豆と一緒に食べることが長寿の秘訣です。そのことを、大豆や魚、野菜を食べず短命になったスコットランドの人々や、ブラジルの日系人、先進国の中で生活習慣病が最も多いオーストラリアの先住民で大豆蛋白質の入ったパンなどを食べていただき証明しました。  
 結論として、元気に輝いて生きるには、ご飯を中心に、魚、大豆、コレステロールを除いた肉、緑黄色野菜、海藻を食べることが大切です。これは日本食で摂れますが、日本食には二大欠点があります。まず塩分の摂りすぎで、私共の世界研究では、1日7gに減らせば脳卒中による死亡率はゼロになりますのでWHOでは、1日5gを目標としています。
 食塩の害を打ち消すものとして、野菜のカリウム、乳製品や海藻に多いカルシウム、マグネシウムを摂ることが大切です。
第2の欠点はカルシウムの慢性的な不足です。これには、ヨーグルトなど西の長寿食、乳製品を摂取すると良いのです。
乳製品にはナトリウムの害を防ぐカリウム、マグネシウム、カルシウムが多く、脳卒中を予防する力があり、しかも、骨の健康に良いカルシウム、マグネシウムも充分含まれています。脳卒中と骨粗鬆症による骨折で日本人の健康寿命は平均寿命よりも10年も短いのです。日本食の二大欠点を補う西の長寿食が乳製品なのです。
 優れた日本の伝統食を食べ、さらに西の長寿の栄養源、乳製品を活用すれば健康寿命は確実に延ばせます。
 

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