講演3

Lec3 Takano座長 
公益財団法人ダノン健康栄養財団 専務理事
高野 俊明


Lec3 Takata13.「健康長寿と食事」

国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部 栄養ケア・マネジメント研究室 / 食育研究室 室長
高田 和子

 

1 .背景

 日本は、この50年で男性では約13年、女性では約14年寿命を延伸してきた。2014年簡易生命表によると、男性の平均寿命は80.50年、女性は86.83年であり、国際的に比較しても長寿な国といえるだろう。日常生活に制限のない期間とされている健康寿命は2013年の報告によると男性は71.19年、女性は74.21年であり、平均寿命との差は約10年ある。それでも、世界保健機構の報告による健康寿命の比較では、諸外国と比較して健康寿命も高い状態にある。平均寿命のみならず健康寿命も高い背景には、医療の進歩、各種の保険制度の整備等、様々な要因がかかわっているが、栄養的にみた場合はどうだろうか。

2 .長寿をもたらす日本の食事の特徴

 どのような食事の内容が現在の長寿あるいは健康長寿をもたらしているかを検討することは難しい。現在の高齢者は、日本が貧しい状態だけでなく、戦中・戦後の食糧不足を経験し、その後の高度経済成長に伴う栄養改善という人生において栄養状態の大きな変遷を経験している。それぞれの時期のどの食事が現在の長寿、健康長寿に影響しているかを検討することは困難である。  今回は、1 つの栄養素の摂取量と死亡、疾病発症の関係ではなく、食品の組み合わせと死亡、疾病発症との関係をみた研究を中心に紹介し、長寿・健康長寿に通じる食事の特徴について検討する。これまでの栄養に関する調査では、様々な栄養素の摂取量と各種疾病発症などの関係を検討することが多かった。しかし、実際には食事は各種食品の組み合わせで構成されており、近年、食事ターンに関する研究が増えてきている。この研究では、各食品別の摂取量から、多くの人が組み合わせることの多い食品の摂取パターンをみつけ、その組み合わせで食事をする傾向の強い人と弱い人の間で死亡率、疾病の発症率の関係を検討している。日本人に関するこれらの研究の結果をみると、緑黄色野菜、淡色野菜、果物、海藻、乳製品、大豆製品を多く摂取する組み合わせの食事が死亡率の低下、疾病の発症の低下に関連している可能性がみられる。野菜、果物、乳製品の摂取の組み合わせは海外の研究でもみられるものであるが、そこに海藻や大豆製品、一部の研究では生鮮魚が組み合わさっていくことが、日本人の食事の特徴と考える。また、緑茶摂取にも死亡率の低下に貢献している。 このような食事パターンは、認知症予防やサルコペニア予防のために勧められている食事にも共通する部分がある。

3 .国民健康・栄養調査成績から

 平成24年度の国民健康・栄養調査は拡大調査として、例年、全国の300単位地区を対象としていたところから、各都道府県から10地区(東京は15地区)の475単位地区を対象とした拡大調査として実施された。厚生労働科学特別研究事業「国民健康・栄養調査を活用した生活習慣病の対策に資する研究」では、平成24年度国民健康・栄養調査成績をもとに、断面的ではあるが食事の状況と健康状態の関連や食事のとり方の特徴について検討をしたので、その結果を一部、紹介する。

4 .将来

 コホート研究などにより、これまでの食事と死亡、疾病発症との関係を比較すると、日本人の食事の特徴と思われる食事内容が、日本人の健康寿命の延伸に何らかの影響を与えている可能性が散見される。では、これからの日本人はどうなるであろうか。現在、健康長寿を達成している高齢者と比べて、より健康長寿を延伸できる食事の状態にあるだろうか。若年者の状況を比較しながら、今後の課題についても考察する。  

 

 

 

 

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