講演1

Lec1 Arai座長 
東京農業大学 客員教授
荒井 綜一


Lec1 Osawa1.「機能性食品因子と健康」

愛知学院大学心身科学部 教授
大澤 俊彦

 1 .はじめに  
 世界に先駆けて日本で誕生した「食の機能性研究」からアメリカの「デザイナーフーズ」、さらには、日本で産声をあげた「食品因子(フードファクター)」の概念は世界的にも広まり、認知されるようになってきました。しかしながら、日本では、国の規制により「機能性」の概念は取り入れることができず、限られた健康表示しかできない「特定保健用食品」としてしか認められませんでした。一方、欧米では、このようなビタミン、ミネラル、ハーブなどのもつ栄養性や生理機能に対する補助的な作用が着目されてきましたが、これらの栄養補助食品に対する考え方は必ずしも世界共通ではないのが現状であり、規格基準化と表示の国際的な統一の必要性が討議されてきました。このような背景で、2015年4 月にアベノミクスの経済振興策の一環として、「機能性表示食品」制 度がスタートしました。この内容については、森下竜一教授の基調講演で詳細に紹介されますので、本講演では、機能性食品因子、特に、抗酸化食品因子の健康に及ぼす役割を中心に、最新の研究の現状と動向を中心に紹介してみたいと考えています。
 
 2 .「攻めの栄養学」への期待
 細胞から個体レベル、臨床研究などによる機能評価を進めていますが、ある一つの「機能性食品因子」が、ある特定の病気だけに効くということはありません。私たちの体には本来、体を守るための防御機能がいくつか備わっており、これらの機能を高めることが重要です。大切なのは、いくら、病気の予防に有効な成分が豊富に含まれているからといって、その食品ばかりを食べるのではなく、バランスが重要です。最近、私は、「デザイナーフーズ」に日本で研究が進められてきた日本の伝統食品を加え、12の食品群に分類してみました。しかしながら、日常の食事だけでバランスよく12の食品群に含まれている「食品因子」を摂取することは難しいのが現状であるので、どのような「食品因子」が不足しているのか推定することで、「テイラーメード」のメニューができるのではないか、と期待しています。そのためには、カロリー制限や塩分摂取の制限のような「守りの栄養学」だけでなく、積極的に機能性を持つ「非栄養素」、特に、バランスのとれた「機能性食品因子」の摂取する「攻めの栄養学」が必要となるでしょう。
 
 3 .食品機能評価法の重要性
 多種多様な機能性が期待されるサプリメントや健康食品の科学的根拠を持つ評価法の開発に最も重要視されているのが、老化に関連した疾病の予防に重要な疾患予防バイオマーカーや酸化ストレスバイオマーカーの開発です。例えば、記憶学習能力向上などを期待して乳児用調製粉乳に添加され、また、脳内機能亢進作用に必須なドコサヘキサエン酸(DHA)も過剰な炎症反応が生じると酸化障害を引き起こし、アルツハイマー症をはじめとする認知症の発症に大きな役割を果たしているとの結果を得て、認知症に特異的なバイオマーカーの開発をめざしています。また、最近では、浜松ホトニクス研究所と共同で、微弱光検出技術を応用した「蛍光・化学発光同時測定装置」を用いて、機能性食品因子の持つ免疫力と抗酸化力を同時に図ろうというものです。さらに、様々な機能性食品を食べた後の健康のバランス状態が簡単に測定できる試作機を開発し、どのように体の中で作用し、健康長寿へ貢献できるか、評価できるようにしようというプロジェクトも進みつつあります。
 
 4 .機能性食品因子のヒト臨床への応用
 今まで40年近くの年月をかけて、アントシアニンやカカオポリフェノール、クルクミンやゴマリグナン、ダイズイソフラボノイドのような抗酸化ポリフェノール類の機能性開発研究を行うとともに、ラクトフェリンやエルゴチオネイン、アスタキサンチンなどにも着目し、これらの機能性食品因子が最終的にはヒト臨床へ応用できるような次世代の「サプリメント・健康食品素材」として期待できるものと考えています。演者らが現在進めつつあるヒト臨床試験として、カカオポリフェノールを対象とした大規模介入試験と、ダイズイソフラボンのエクオールへの生体内変換に関する研究が注目されてきています。 本講演では、これらの最新の話題を中心に紹介してみたいと考えています。
 

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