メールマガジン「Nutrition News」 Vol.65
第12回ダノン健康・栄養フォーラムより
栄養アセスメントの実際
せんぽ東京高輪病院栄養管理室 主任
徳永 圭子 先生

栄養の問題を解決するためには、様々な情報を収集することが必要となります。しかし、収集した情報が間違っていてはいけません。直近の情報と検査などのタイムラグは矛盾を生むことがあることを踏まえ、摂取栄養量と身体計測、検査データ、食べるための機能など収集した情報の妥当性を評価する必要があります。

栄養アセスメントの実際

体重から矛盾を探る

体重の増減は、エネルギーと関係しています。摂取エネルギーが20kcal/kg以下であるのに体重変化がない、または増加している場合、これは明らかな矛盾です。肝硬変や心不全など浮腫を伴うような疾患がないか、体重の測定が正しいかを確認することが必要でしょう。

水分摂取の把握は正しいか?

経口摂取の場合、全量摂取の患者で水分量が25~30ml/kg以下というのは、私たちが日常的に55ml/kg程度は水分を摂取していることから考えると非現実的であると言えます。食事中の水分量を適正にカウントしているか、飲んでいる水の量を確認していないのではないか、などの情報収集を行う必要があるでしょう。

静脈栄養を併用している場合は、溶解水やキット製品などの薬剤の見落としがないかを確認することや、尿量などの日々の変化を見ていくことも重要です。
例えば、経腸栄養への移行期には、静脈栄養を減量するため、過去の栄養投与量を検証し、水分のインとアウト、経腸栄養の含有水分とフラッシュなどで増える水分などを考慮します。

摂取ナトリウム量の妥当性

ナトリウムの最低必要量は70mEqと言われています。ナトリウム摂取量が70mEq以下で、血清ナトリウムが正常値である場合、「問題ない」と考えて良いのでしょうか。血清ナトリウムが正常値でも、水分不足のために血清ナトリウムが正常値となることがあるので、そのような場合には、摂取ナトリウムが不足していると考えるべきでしょう。

ただし、心不全があるためにナトリウムも水分も調整して少なくしている場合には、ナトリウム摂取量が適正であることがあります。このように、水分とナトリウムを一緒に考えながらアセスメントを進めていくことが重要です。

摂取水分量の妥当性

水分摂取量が多い(55ml/kg以上)場合に考えなければいけないのは、水分過剰の危険性は何かということです。患者の病態として、浮腫を観察することが重要です。浮腫が表面的には見られなくても、利尿剤を使っているためであることが考えられます。また、高齢者では保水の力が弱くなっていることからも、55ml/kg以上というのは水分過剰であると考えたほうが良いでしょう。摂取ナトリウムが少ない場合には、低ナトリウム血症の可能性が出てくるので注意が必要です。

摂取カリウムの妥当性

カリウム40mEqは約1,600mgに相当します。腎疾患などでタンパク質やカリウムを制限する場合、1,600mgを基準に考えます。制限がある状態で血清カリウム値が高いときには、薬物の副作用や、カリウム保持性の利尿剤で血清カリウム値が上昇しているかもしれません。また、腎機能の低下、溶血、消化管出血、静脈栄養量の増加を見落としていることなども考えられます。

摂取タンパク質の妥当性

タンパク質の摂取量が1.0~1.2g/kg以下で尿素窒素が上昇することは、通常はあまり考えられません。腎機能の低下、利尿剤の増加、薬の副作用、消化管出血などの可能性を踏まえて、情報の妥当性を考えていくことが大切です。

低栄養の問題は栄養によるのか、栄養以外なのか

食欲低下を例とした場合、栄養に関係する問題として、ナトリウム不足、水分過剰、ビタミン不足などが考えられます。それに対して、栄養に関係しない問題もあります。

例えば、術直後、癌悪疫質、終末期など、食事が食べられない状況が考えられます。発熱や精神的なストレス、便秘で腹部膨満がある場合などでも食欲が落ちることがあります。

嗜好の面では、塩分を制限することで薄味になり、さらに食欲が低下することも考えられます。実際の摂取量は食塩相当量で2~3g程度である場合でも、食塩を制限する必要があるのでしょうか。このようなケースでは、医師に相談の上、漬け物や汁物を提供するなどして食欲を出してもらった上で、アセスメント、モニタリングを行い、再び塩分制限を行うことも良いかもしれません。

また、自宅と病院で食事の内容や時間が違っているために空腹感がないような場合には、自宅の食事と比較し、1日2食にするなどの配慮も必要になってくるでしょう。
食事をするときの姿勢が悪いために腹圧がかかり、食事が進まないということもあります。そういった食事の環境について見ることも私たち管理栄養士の仕事だと思います。
このように、様々な情報を整理して、可能性の薄いことを消去しながら実際のプランにつなげていくことが大切です。

管理栄養士の専門性とチーム医療

チーム医療における管理栄養士の役割とは、低栄養の原因を見極め、それに即したケアを提言、実施することであると考えます。摂取栄養量から評価をするためには、静脈栄養や経腸栄養について総合的に理解しておく必要がありますし、低栄養の原因を整理するためには、栄養以外の知識をつけることも重要でしょう。

栄養アセスメントも、患者の未来を決めるものの1つです。適正なアセスメントは適正なケアプランにつながります。正確な情報を必要な部分だけ集めて判断できる総合的な判断力が、管理栄養士には求められているのだと思います。そして、看護師、医師、薬剤師などが観察・評価した結果についても管理栄養士の目線で考え、評価できることが、管理栄養士の専門性であり、「チーム医療」でもあるのではないでしょうか。

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